お問い合わせ
お電話でのお問い合わせ
03-6447-2653
メールでのお問い合わせ

企業・法人批判は名誉毀損で訴えられる?判例を紹介

hibou-chusyo

2023.10.26
  • 誹謗中傷

何気ない発言、あるいは意図的な悪口が名誉毀損となって裁判沙汰となってしまうことがあります。

特に、インターネット技術が発展した現代ではSNSなどのツールを通じて名誉毀損となる事例が多発しています。

この記事では、企業・法人批判によって名誉毀損になるのか、判例を交えながら紹介

名誉毀損に該当する場合とそうでない場合をケース毎に確認していきましょう。

企業や法人への名誉毀損

企業 名誉毀損 判例

企業や法人の評価を下げるような噂を流すことは名誉毀損罪に該当します。

また、名誉毀損罪以外にも侮辱罪、信用毀損罪に該当する場合があります。

名誉毀損罪に該当する場合と該当しない場合について、刑法の条文を見ながら確認していきましょう。

名誉毀損(めいよきそん)とは?

名誉毀損は他人の名誉を傷つける犯罪行為です。

刑法第230条によると、名誉毀損は以下のように規定されています。

<刑法第230条:名誉毀損(きそん)>
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

名誉毀損に該当するには、以下の3要件を満たしている必要があります。

他人や企業への悪口が名誉毀損に該当するかどうか、これらの要件を満たしていることを確認するといいでしょう。

<名誉毀損の3要件>
・公然であること
・事実を適示していること
・名誉を毀損していること

公然であること

名誉毀損が認められる要件として、第一に「公然であること」が挙げられます。

公然であるとは、不特定多数が知り得る可能性がある状態を指します。

公衆の面前で侮辱すること、あるいはインターネット上で誰でも閲覧可能な状態で悪口を言うことが公然である状態です。

仮にプライベートな会話である場合は公然でないとみなされ、名誉毀損とはなりません。

事実を摘示していること

名誉毀損が認められるには、「事実を摘示していること」が要件の1つです。

摘示(てきし)とは要点をひろって示すこと、あばき示すことを指します。

その人の事実をあばいて公衆の面前に晒すことが事実を摘示している状態です。

なお、刑法230条に「事実の有無にかかわらず」とあるように、摘示した内容が事実であるかどうかは関係ありません。

事実でなくても、さも事実であるかのように噂を立てることは事実を摘示している状態といえます。

名誉を毀損していること

第3の要件として、その人の名誉を毀損していることが挙げられます。

ここでいう名誉とは、対象となる個人あるいは企業の評価や評判を指します。

公共の利害に関する場合の特例

名誉毀損はすべての場合に適用されるわけではなく、一部の特例があります。

例えば、公共の利害に合致する場合は名誉毀損の対象外という特例があるのです。

刑法第230条の2によると、公益を図ると認められる場合にはその事実の真否を判断して罰しないことが定められています。

<刑法第230条の2>
1 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

例えば、政治家の不祥事を暴く場合や企業の不祥事を暴く場合は公益の利害に関する事実です。

ただし、事実の真否を判断して真実であったことの証明を必要とします。

名誉毀損罪と侮辱罪

名誉毀損罪と似た犯罪に侮辱罪というものがあります。

侮辱罪とは、事実を摘示しなくても公然と人と侮辱した場合に適用される罪です。(刑法第231条)

<刑法第231条>
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

名誉毀損と侮辱罪の違いは、「事実を摘示しているかどうか」という点です。

事実を摘示していれば名誉棄損罪、事実を摘示していなければ侮辱罪という風に判断します。

名誉毀損罪と信用毀損罪

信用毀損罪はその人の経済的な信用を毀損する罪です。

同じ毀損ですが、名誉を毀損するか信用を毀損するかという違いがあります。

<刑法第233条>
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

具体的には、名誉毀損罪はその人の名誉や社会的立場を毀損するものです。

一方で、信用毀損罪はその人の経済的な信用を毀損するものです。

例えば、企業の社会的な信用を下げるようなデマを流して企業の売上が下がってしまった場合、信用毀損罪に該当します。

名誉毀損で裁判された判例

企業 名誉毀損 判例

名誉毀損に該当するかどうかは判断が難しく、裁判で争われた事例がいくつかあります。

ここからは、実際に名誉毀損罪として争われた判例を見ていきましょう。

個人によるインターネット上の名誉毀損

平成22年3月15日の裁判では個人によるインターネット上の利用による名誉毀損であるかどうかが争われました。

結果としては、被告による名誉毀損の訴えは却下されています。

事件番号平成21(あ)360
事件名名誉毀損被告事件
裁判年月日平成22年3月15日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別決定
結果棄却
判例集等巻・号・頁刑集 第64巻2号1頁
裁判概要:名誉毀損被告事件

<判示事項の要旨>
 1 インターネットの個人利用者による名誉毀損と摘示事実を真実と誤信したことについての相当の理由
2 インターネットの個人利用者による名誉毀損行為につき,摘示事実を真実と誤信したことについて相当の理由がないとされた事例

被告は原告である株式会社に対して、当該企業の名誉を毀損するような題名のホームページを立ち上げました。

ホームページには同企業がカルト集団であるかのような虚偽の内容が記載され、不特定多数が閲覧可能な状態にしています。

被告が言いふらした内容については真実であることの証明がありませんでした。

一方で、被告人は一市民としてインターネットの個人利用者に対して要求される水準で調査を行ったうえでの主張と認められたことによって、被告人がホームページに掲載した内容を真実と判断する相応の理由があったことが認められました。

上記の理由により、被告が訴えた名誉毀損罪は却下されています。

参考:裁判例結果詳細「平成21(あ)360」

サンケイ新聞事件

昭和62年4月24日の裁判では当時のサンケイ新聞事件に掲載された意見広告をめぐり、名誉毀損が成立するかどうか等の論点が争われました。

いわゆる「サンケイ新聞事件」と呼ばれているこの裁判では、1973年12月2日付朝刊のサンケイ新聞(現産経新聞)に掲載された意見広告に関する裁判です。

意見広告は自由民主党が日本共産党に対して異議を申し立てる内容でした。

共産党は発行元の産業経済新聞社を訴え、無償で反論文掲載のアクセス権を求めます。

結果として、原告側の日本共産党による訴えは棄却され、名誉毀損罪は成立していないものとされています。

事件番号昭和55(オ)1188
事件名反論文掲載
裁判年月日昭和62年4月24日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第41巻3号490頁
裁判概要:反論文掲載

<判示事項の要旨>
 一 人格権又は条理を根拠とするいわゆる反論文掲載請求権の成否
二 新聞紙上における政党間の批判・論評の意見広告につき名誉毀損の不法行為の成立が否定された事例

裁判では、サンケイ新聞が掲載した広告について名誉毀損の不法行為が成立するかどうかについて争われました。

被告の主張である意見広告は原告の社会的評価を下げることを狙ったものでありますが、その内容については要点を外さないものとされています。

また、広告の内容は公共の利益にに関する事実であり、公共の利害に関する場合の特例に準じて名誉毀損罪とは見なされない、という判決が出ています。

参考:裁判例結果詳細「昭和55(オ)1188」

相手方の氏名を明示しない名誉毀損

昭和28年12月15日の裁判では 相手方の氏名を明示しない公務員に関する新聞記事について、名誉毀損罪が成立するかどうかが争われました。

事件番号昭和27(あ)3760
事件名名誉毀損
裁判年月日昭和28年12月15日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁刑集第7巻12号2436頁
裁判概要:名誉毀損

<判示事項の要旨>
 相手方の氏名を明示しない公務員に関する新聞記事が名誉毀損罪を構成する事例

裁判では被害者の氏名が明記されていないものの、証拠を総合すると明らかに被害者を特定できるものと認められています

相手の氏名がなくても、対象が誰であるか明らかである場合には名誉毀損と認められたという判例です。

 参考:裁判例結果詳細「昭和27(あ)3760」

名誉毀損に関する刑事と民事の違い

企業 名誉毀損 判例

名誉毀損には刑事上の裁判と民事上の裁判があります。

損害賠償を求めるときには民事上の手続きが必要です。

民事事件と刑事事件の違い

民事事件と刑事事件の違いは民事事件では私人同士の争いであるのに対し、刑事事件が検察官と被告人の争いです。

私人同士の争いとは企業と企業、企業と個人、個人と個人といったように当事者同士の争いです。

また、民事事件では和解によって解決できるのに対し、刑事事件では和解はなく、有罪か無罪かどうかを必ず判決します。

刑事事件民事事件
私人同士の争い。
(企業と企業、企業と個人、個人と個人など)
検察官と被告人の争い。
和解によって解決できる和解はない
民事事件と刑事事件の違い

民事上の名誉毀損罪

民事上の名誉毀損罪においては、名誉毀損をした相手に対して損害賠償などを請求します。

損賠償を行うためには相手の特定を行って裁判を起こします。

裁判を起こす際は、弁護士に委任するのが一般的です。

刑事上の名誉毀損罪

刑事上の名誉毀損罪においては、警察に相談して告訴状を提出します。

相手が特定できている場合にはその情報を提出し、特定できていない場合は被害届を提出します。

刑事事件によって与えられるのは刑事罰のみであり、損害賠償をする際には別途民事上の手続きが必要です。

名誉毀損の要件をチェック

企業 名誉毀損 判例

名誉毀損の要件や判例を確認していきました。

名誉毀損罪は①公然であること、②事実を摘示していること、③名誉を毀損していること、の3つが要件とされます。

被害者となる企業だけでなく、個人も加害者として当事者となる可能性があるため、注意しましょう。

判例によると、名誉毀損が認められるかどうかについては、名誉毀損の内容が公然の利益でないかどうか、相手を特定できるかどうかが争点となります。

名誉毀損に関して、どのようなケースが名誉毀損になるかどうかを把握して適切な防御手段をとりましょう。

]]>

Follow me!

RECOMMENDおすすめ記事

PAGE TOP
Checking...