Googleのサジェストをめぐる裁判例を紹介!ネガティブな表示への対策も解説
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- サジェスト汚染・サジェスト対策
「悪質なGoogleのサジェスト表示を理由に裁判は起こせるのだろうか」「裁判で勝訴した例はあるのだろうか」「裁判以外にどのような対処法があるのだろうか」というようなことを知りたいと思っておられませんか。
会社名や商品名で検索する際に、検索候補欄に事実と異なるネガティブなサジェストが表示される場合は少なくありません。
そこでこの記事では、Googleのサジェスト機能に関する裁判の判例についてを解説いたします。他にも、裁判以外でネガティブなサジェストに対処する方法を紹介しています。自社でネガティブなサジェストへの対策を講じたいとお考えであれば、参考にしてください。
Googleのサジェスト機能とは
Googleのサジェスト機能について、正しく理解できていないという方が多いかもしれません。そこで対策方法の詳細についてお話しする前に、サジェストの概要について簡単に解説します。あらかじめ知識をつけておけば、対策方法に関する説明も理解しやすいと思います。
サジェストがどのように表示されるのか、自社の表示内容をどのようにリサーチするべきかといったポイントなどについて解説していきます。ぜひ参考にしてください。
1.表示例と仕組み
Googleのサジェスト機能とは、気になる言葉を調べようとした時に表示される、検索サポート機能の呼び名です。一緒に検索すべきキーワードを一覧にし、ユーザーに自動で提案してくれます。
例えば「レシピ」と検索すると、以下のようなサジェストが表示されます。
・レシピ 人気
・レシピ 英語
・レシピ ブログ
これらのサジェストは、次の4つの基準で選定されています。
・ユーザー全体の検索傾向
・キーワードのトレンド性
・ユーザーの過去に検索した履歴
・キーワードに関連する情報の多さ
つまり、企業にとって意図しないキーワードや、事実と異なる内容が表示される可能性があるということです。
ユーザーはキーワードを掘り下げて調べる際、このサジェストを参考にして検索内容を決めることが多々あります。一度サジェストに表示されたキーワードは検索される機会が増えていくので、なかなか一覧から消えない状態となってしまうのです。
2.調べ方
自社の会社名や商品名を検索にかけた際、どのようなサジェストが表示されるのか、気になるところではないでしょうか。そこでサジェストの内容を調べる方法を2つ紹介します。
ひとつ目は、ユーザーの目線で自ら検索する方法です。実際に検索してみることで、実際に表示されているサジェストを確認できます。
ポイントは、シークレットウィンドウやシークレットモードのブラウザで検索することです。これらは、過去の検索による影響を排除した上で検索できる機能を指します。一般のユーザーと同じ条件で、サジェストの確認が可能です。
ふたつ目は、ツールでサジェストの候補を自動取得する方法です。ツールを使うと、通常の検索では確認できない潜在的なサジェストまで表示できます。無料で使えるサジェスト取得ツールは以下の通りです。
・ラッコキーワード
・ウーバーサジェスト
・Googleキーワードプランナー
自社の商品に関する検索結果としてのサジェストをより詳しく知りたい場合は、ツールの活用を検討しましょう。
ネガティブなサジェストによる悪影響
Googleのサジェストは、ユーザーの検索傾向や各Webサイトの内容に影響され、企業にとってネガティブなキーワードを表示する可能性があります。ネガティブなサジェストを対応せずに放置しておくと、企業の営業活動に悪影響を及ぼしかねません。
本章では、ネガティブなサジェストが及ぼす悪影響を紹介します。売り上げやブランドイメージを守るために、しっかり確認しておきましょう。
1.売り上げの低下
ひとつ目の影響として、売り上げの低下が考えられます。サジェストに表示されたネガティブな言葉の印象に左右され、その企業の利用を控える可能性が否めません。
例えば、気になる食品について検索しているときに、次のようなサジェストが目に入ったら、ユーザーの購買意欲は低下するでしょう。
・商品名 クレーム
・食品名 まずい
・会社名 悪質
サジェストを見たユーザー以外にも口コミが広がり、悪影響の拡散が考えられます。
2.採用活動の難航
サジェストの表示は採用活動に悪影響を与えます。就職希望者がインターネットで企業の評判を調べる際、ネガティブなサジェストが目に入ってしまうからです。
就職したいと思っていた会社を検索した際、以下のようなサジェストが現れたら、応募をとりやめてしまうかもしれません。
・会社名 ブラック
・会社名 自殺
・会社名 サービス残業
採用活動の難航によって人員が不足し、営業に支障が出る可能性があります。
3.与信への打撃
ネガティブなサジェストが与信に影響を与える可能性があります。与信とは銀行をはじめとした金融機関が取引先企業へ与える信用度であり、与信に応じてどれだけのお金を貸してくれるかが決まります。
取引相手が次のようなサジェストを見かけたら「この会社は期日までにお金を払ってくれるのだろうか」と不安になるかもしれません。
・企業名 債務超過
・企業名 未払い
・企業名 倒産
最悪の場合、銀行から融資を受けるのが難しくなったり、取引を打ち切られたりするリスクもあります。
Googleサジェストをめぐる裁判の争点
Googleのサジェストに関する裁判では、次に紹介する「忘れられる権利」と「名誉毀損の有効性」が争点になります。
あまり聞き慣れない言葉だったり、なんとなく知っていても深い意味までは分からない言葉だったりするかもしれません。裁判の事例に進む前に、押さえておくべきポイントを確認しましょう。
1.忘れられる権利
「忘れられる権利」は、インターネット上に残る個人情報を、検索結果から排除できる権利です。例えば「忘れられる権利」でよく議論されるのが、過去の犯罪歴に関する情報です。
インターネットが発達したことで、犯罪歴に関する過去の実名報道が誰にでも閲覧できるようになりました。そのため報道から時間が経って本人が更生したにも関わらず、就職先などに犯罪歴が知れ渡り、差別を受けたり入社を断られたりする例があります。
このような被害を生まないために、自分の過去に関する情報を検索結果から削除するよう求めるといった手段を通じて「忘れられる権利」を行使することが可能です。
犯罪歴以外にも、次のような内容の削除を「忘れられる権利」を通じて主張できます。
・病歴
・未成年の情報
・デジタルタトゥー
・出生や属性
つまり「忘れられる権利」は、ユーザーにとって不都合のある情報を削除するための申請ができるという権利です。
2.名誉毀損
名誉毀損とは、誹謗中傷などについて次の要件を満たす際に適用されます。
・不特定多数の人に伝わる状況で
・事実を適示し
・他者にそれが伝わる可能性があること
状況次第では、サジェストの表示が名誉毀損に当てはまる可能性があります。なお、事実性が伴わない内容は、侮辱罪として取り扱われます。
名誉毀損が認められると、以下のような対応が可能です。
・削除請求
・損害賠償請求
・刑事的責任の追求
かつては行き過ぎたマスコミの報道が問題視されていましたが、インターネットが発達した今、SNSや掲示板など身近な場でも名誉毀損が成立しています。
サジェストの削除を求める裁判の結果
ネガティブなサジェストの表示が原因で、世界中で裁判が行われています。本章で紹介するのは、サジェストの削除を求めてGoogleに裁判を起こした事例です。
結論から言うと、日本の裁判ではGoogleを訴えても、サジェストの削除までたどり着くのが困難な状況となっています。国内の例を含めて実際の判決を3つ、ご紹介します。
1.フランスではGoogleが敗訴
2010年、フランスでGoogleのサジェスト表示を理由にした裁判で、Googleが敗訴するケースがありました。フランス人男性が自らの名前を使ってGoogleで検索すると、身に覚えのない犯罪歴をはじめとした、不名誉なサジェストが表示されたことを理由とした裁判です。
男性は名誉毀損を主張しました。これを受けてパリの裁判所は主張を認め、控訴費用と賠償金の支払いをGoogleに命令しています。また、同じような事態が今後繰り返さないよう再発防止に取り組むようGoogleに言い渡しました。
フランス以外でも、ヨーロッパなどの諸外国では「忘れられる権利」を主張して、Googleを訴える裁判がたびたび起きています。
2.東京地裁では表示の差し止めが命令された
日本では、Googleにサジェストの表示差し止め命令が下った裁判がありました。裁判を起こした男性によると、犯罪への関与を思わせる誹謗中傷記事がインターネット上に溢れ、個別対応が難しいと判断してGoogleを訴えることにしたとのことです。
一連の騒動によって職を失ったり、就職先の内定が取り消されたりする被害がありました。
東京地裁では男性の主張が認められ、該当のサジェストや関連キーワードの表示を差し止めるようGoogleに命じます。
しかし、Googleは「日本の法律に縛られるべき内容ではない」「社内ポリシーへの違反はしていない」という理由で、命令には応じないと発表しました。
3.高裁では権利侵害を認定するも、差し止めは認めなかった
一審判決でサジェストの削除と賠償支払いが命じられるも、Googleが控訴して逆転した裁判がありました。
自らの名前を検索すると、犯罪を思わせるサジェストが表示されるとして、2012年に起きた裁判です。被害者は就職活動に悪影響を与えるなどの事態に見舞われました。
結果的にサジェストによる人権侵害は認められたものの、それによって差し止めを認めることはできないと東京高裁で判断されました。
裁判での訴えが認められない理由
日本において、Googleを相手にした裁判では、削除や賠償の訴えがなかなか通らない傾向にあります。
主な原因は、Googleのサジェスト表示の特性や、日本における「忘れられる権利」の取り扱いにあると考えられます。訴えが認められない理由を3つ紹介するので、裁判の難しさやポイントを理解し、さらなる対応を検討しましょう。
1.サジェストは機械的な処理の結果に過ぎないから
サジェストで表示される内容は意図的に選んでいる訳ではなく、機械的な処理の結果に過ぎません。人為的にコントロールができないため、裁判でGoogleにサジェストの削除を強く求められないようです。
例えば、AIがインターネット上からサジェストに掲載する言葉を自動取得した結果、「〇〇(個人名) 詐欺」と表示されるとします。
この場合、「この人が詐欺の被害にあったのか」「この人が詐欺を犯したのか」の区別がつきません。機械的なサジェスト表示が、名誉毀損やプライバシー侵害を連想させるのか、根拠に欠けるのです。
2.ユーザーの公共性を守るため
日本の最高裁では、サジェスト関連以外の裁判においても、Googleがユーザーに与える公益性を尊重しています。
Googleの検索によって与えられる個人への悪影響よりも、ユーザー全体への利便性の価値が大きいということです。そのため、仮にサジェストによる名誉毀損や侮辱が明らかでも、削除に値する材料としては不十分であるという判断されることが起こりえます。
3.日本における忘れられる権利の認識が曖昧だから
「忘れられる権利」は欧米やヨーロッパで広く認められている権利ですが、日本での取り扱いは曖昧なままです。
曖昧なままとなっている理由としては、法律において明文化されていないからです。そのため、海外の裁判であれば「忘れられる権利」の主張が認められる状況においても、日本での立証は難しくなってしまいます。
実際、サジェストに関する裁判では「忘れられる権利」への明言を避けていることがほとんどです。
裁判以外でサジェスト対策をする方法
Google相手の裁判でサジェストの削除が難しいのなら、それ以外の対策を考えなければなりません。裁判以外でサジェストの表示を改善する方法は3つあります。自社でできる方法や、専門家に依頼して確実性を高める方法を紹介します。
自社の状況に照らし合わせ、適切な対策法を選ぶ際の参考にしてみてください。
1.自社で削除依頼
一つ目は、自社でサジェストの削除依頼をする方法です。
Googleの「不適切な検索候補の報告」や「法律に基づく削除に関する他の問題を報告する」という専用フォームで必要事項を入力し、削除の申請を行いましょう。ただし、削除が認められるには具体的な根拠が必要です。
確実性を高めるには、過去の裁判例などを参考に根拠を記載した上で、申請するとよいでしょう。
2.弁護士へ相談
二つ目は弁護士に相談する方法です。Googleへの削除申請は個人でもできるとはいえ、必ず申請が通るとは限りません。しかし、弁護士に依頼すれば法的根拠を用いて削除を依頼できます。
ただ、弁護士の利用には多額の費用がかかる場合があることに注意が必要です。
3.専門対策業者へ依頼
三つ目目は専門の対策業者に依頼する方法です。弁護士に依頼すれば確実に削除できますが、ネガティブなサジェストが再び表示される可能性があります。
もちろん情報の削除は大切ですが、それらの情報が多くのユーザーの目に留まらないようにして、同じような被害を受けないように対策をすることも重要です。
また専門対策業者に依頼すると、ネットの誹謗中傷や風評被害への対策まで一任できるというメリットがあります。専門対策業者では、問題を根本的に解決した上で、再発予防が可能です。
専門対策業者にサジェスト対策を依頼するメリット
専門対策業者に関する情報はあまり多くないので、利用に不安を感じる方がいらっしゃいます。
そこで本章では、専門対策業者にサジェストの対応を依頼するメリットを3点解説いたします。専門対策業者に依頼することで、サジェスト問題の根本的な解決が可能です。以下で詳しく解説するので、対策の参考にしてみてください。
1.原因の追及ができる
専門対策業者に依頼することで、なぜネガティブなサジェストが表示されてしまうのか、原因を解明できます。
仮にサジェストを削除できても、原因が分からないままでは再発してしまう可能性があります。再発の度に対応を繰り返しては、費用や時間がどれだけあっても足りません。
専門対策業者に依頼することで原因を特定し、発生源そのものを根絶しましょう。
2.逆SEOによる技術的対応ができる
逆SEOを通じた、削除とは違う角度でのサジェスト対策ができます。
逆SEOというのは、多くの人に知られたくない情報や書き込みについて、ネットの検索結果で表示されにくくする施策です。悪質な書き込みがされている掲示板や誹謗中傷記事が検索結果で上位表示されてしまっている場合などに有効な手段です。
逆SEO自体は個人で行うことが可能ですが、専門的な知識と時間を要します。専門対策業者に依頼して進めるのが得策でしょう。
3.トラブルになる前に早期発見ができる
ネガティブなサジェストは放置したままにすると、さまざまな悪影響を与えます。最悪の場合、誹謗中傷や風評被害に発展する可能性が否めません。
専門対策業者は常にインターネット巡回を行っているので、トラブルの種を早めに察知できます。被害が大きくなる前に対応できるのは、専門対策業者に依頼する大きなメリットです。
サジェスト対策でお悩みの場合は「ブランドクラウド」にご相談ください
Googleのネガティブなサジェストでお困りなら、「ブランドクラウド」がご提案するサービス「風評被害クラウド」をご利用ください。
「風評被害クラウド」は、GoogleのアルゴリズムをAIで常に監視しています。アルゴリズムは、人の手で動向を確認するのが主流です。ただ、人力では監視に限界がある上、ヒューマンエラーが発生してしまう可能性があります。AIで監視することで見逃しを防ぐことができます。
また、サジェスト以外の対策についても、原因の洗い出しから対策まで一任することが可能です。サジェスト表示に限らず、誹謗中傷などインターネット上のトラブルに悩む企業担当者の方は、ぜひ「ブランドクラウド」にご相談ください。
まとめ
Googleのサジェスト表示で悪影響を受けている場合、裁判に訴えることは可能ですが、日本国内で削除できた判例はほとんどないのが現状です。
ネガティブなサジェストを対策するのであれば、裁判以外の方法を検討するほうが現実的でしょう。
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