名誉毀損や誹謗中傷で損害賠償ができる?相場はいくら?
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- 誹謗中傷
個人や企業の評判が下がる噂が流れた場合、発信者を特定して損害賠償をできる場合があります。
この記事では、インターネット上の風評被害や誹謗中傷等で損害賠償ができるケースや、損賠賠償の相場を解説。
また、損害賠償が成立する場合の実例や判例を紹介していきます。
損害賠償が成立するケースを確認して、風評被害のリスクに備えましょう!
名誉毀損や誹謗中傷の損害賠償
名誉毀損や誹謗中傷を受けた場合、損害賠償を請求できる場合があります。
損害賠償の定義や、損害賠償に関連する法律の知識を確認していきましょう。
損害賠償とは?
損害賠償とは、他人に損害を与えた者が被害者に対してその損害を填補して、損害がなかった状態にすることです。
また、損害賠償を要求することを損害賠償請求といいます。
損害賠償には大きく「債務不履行」に基づくもの(民放415条)と、「不法行為」に基づくもの(民放709条)に分けられます。
債務不履行による損害賠償は、債務者が約束を果たさない(債務不履行)による賠償です。
一方、不法行為とは故意または過失によって他人の権利を侵害することによる賠償です。
<民放415条:債務不履行による損害賠償>
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
<民放第709条:不法行為による損害賠償>
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
名誉毀損による損害賠償
他人の名誉を毀損(きそん)すること、すなわち他人の名誉を傷つけることを名誉毀損といいます。
名誉毀損は刑法230条に記載されており、「公然と事実を摘示してその人の名誉を毀損した者を罰する」と規定されています。
<刑法第230条:名誉毀損(きそん)>
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
ただし、公共の利益に該当すると認められた場合、例えば正しい情報を摘示して他人や企業の不正を暴く場合などは名誉毀損には該当しません。
SNSやネット上の誹謗中傷による損害賠償
インターネットやスマホが普及した現代では、SNSやネット上での誹謗中傷によって名誉が毀損されるケースが増えています。
ネット上で名誉毀損や誹謗中傷が起こるケースとしては、匿名性の高さや誤った情報の濫造によって無意識に誹謗中傷してしまうという理由が挙げられるでしょう。
こういった誹謗中傷の被害者、あるいは加害者とならないためにも正しい法律の知識を身に着けておく必要があるのです。
<何故SNSやネット上で名誉毀損や誹謗中傷が起こる?>
・匿名性の高さ
・誤った情報の濫造
・無意識による
誹謗中傷や名誉毀損に対する損害賠償・慰謝料の相場はいくら?
名誉毀損が成立する場合、名誉を毀損された事実について精神的苦痛に対して慰謝料を請求します。
損賠償や慰謝料の料金相場はいくらぐらいでしょうか?
名誉毀損による損害賠償の相場
名誉毀損を受けた場合、損害賠償または慰謝料を請求できます。
慰謝料は損害賠償の一種で、加害者に対して精神的な苦痛を終わらされた場合に請求できるものです。
個人への損賠賠償 | 10~50万円 |
事業者への損害賠償 | 50~100万円 |
個人の場合
個人に対する名誉毀損や誹謗中傷に対する損害賠償、慰謝料は10~50万円が相場です。
事業者の場合
事業者や企業に対する名誉毀損や誹謗中傷に対する損害賠償、慰謝料は50~100万円が相場です。
事業者は個人事業主、企業に関わらず名誉毀損を受けた場合の被害が甚大です。
そのため、個人の場合と比べても損害賠償の額が大きくなります。
侮辱罪による損害賠償の相場
侮辱罪とは、公然と他人を侮辱することに対する罪です。
名誉毀損罪とは違い、事実を摘示しなくとも罪に問われます。
侮辱罪は名誉毀損罪よりも軽度な量刑となることが多く、慰謝料の相場は1~10万円です。
<刑法第231条>
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
名誉毀損罪に対する名誉回復措置
名誉毀損罪に対しては、損害賠償以外にも名誉回復措置を命令できます。
名誉回復措置とは、一度失った名誉を取り戻す行為です。
具体的には、謝罪広告を掲載するなどの手段が挙げられます。
<民法第723条:名誉回復措置>
他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
インターネット上の誹謗中傷による損害賠償の実例
インターネット上の誹謗中傷にはどのような事例があるでしょうか?
ここでは、実際に執り行われた裁判の判例について、論点および損害賠償の額を紹介していきます。
インターネット上のなりすましによる誹謗中傷
平成29年8月30日に行われた裁判では、インターネット上のなりすましによる誹謗中傷が争点となりました。
インターネット上の掲示板において,他人の顔写真やアカウント名を利用して他人になりすまし,第三者に対する中傷等を行ったことについて,名誉権及び肖像権の侵害が認められた事例です。
事件番号 | 平成29(ワ)1649 |
事件名 | 損害賠償請求事件 |
裁判年月日 | 平成29年8月30日 |
裁判所名・部 | 大阪地方裁判所 第22民事部 |
<判示事項の要旨>
インターネット上の掲示板において,他人の顔写真やアカウント名を利用して他人になりすまし,第三者に対する中傷等を行ったことについて,名誉権及び肖像権の侵害が認められた事例
原告:なりすまし行為をされ、顔写真を公開された者
被告:なりすまし行為をした者
本件では、被告が原告になりすましてインターネット上の掲示板に第三者を罵倒する投稿を行ったことにより、原告の名誉やプライバシーを侵害したとする裁判です。
被告は掲示板上において原告のプロフィール名、顔写真を使用してなりすまし行為を行い、侮蔑発言や差別発言を繰り返し、原告の名誉を毀損しました。
また、原告の顔写真を勝手に公開したことはプライバシーの侵害となり、不法行為を構成しています。
被告は,被告に対し,130万6000円の損害賠償を支払うという判決になりました。
なお、この損害賠償の内訳は「慰謝料60万円、発信者情報の取得にかかった弁護士費用58万6000円、弁護士費用12万円」とされています。
参考:裁判例結果詳細「事件番号平成29(ワ)1649」
名誉毀損による誹謗中傷
平成25年8月29日に行われた裁判では、名誉毀損による誹謗中傷が争点となりました。
被告は原告が発表した論文にねつ造あるいは改ざんがあることを主張しましたが、被告の主張に正当性は認められず、名誉毀損が成立しました。
事件番号 | 平成22(ワ)1314 |
事件名 | 損害賠償等請求事件等 |
裁判年月日 | 平成25年8月29日 |
裁判所名・部 | 仙台地方裁判所 第3民事部 |
<判示事項の要旨>
国立大学法人の総長であった研究者が過去に発表した論文にねつ造ないしは改ざんがあるとして上記研究者を大学に対して告発する旨の文書をインターネット上のホームページに掲載した行為につき,摘示事実が真実であるとも真実と信じたことについて相当の理由があるとも認められないとして,名誉毀損による損害賠償が命じられた事例
原告:国立大学法人の総長であった研究者
被告:論文をねつ造だと主張した者
本件では、国立大学法人の総長であった研究者(原告)が被告の名誉毀損を主張したものです。
被告は原告が過去に発表した論文にねつ造あるいは改竄があると主張。
しかし、被告の主張に正当性は認められないとして名誉毀損が成立するという判決になりました。
被告に対して110万円の支払いを命じるという判決が成立。
損害賠償の内訳は慰謝料が100万円、弁護士費用が10万円とされています。
参考:裁判例結果詳細「平成22(ワ)1314」
謝罪広告等請求事件
平成31年3月5日に行われた裁判では、週刊誌によるスクープの内容について茨城県守谷市長が名誉毀損および謝罪広告等の掲載を訴えました。
事件番号 | 平成29(ワ)18277 |
事件名 | 謝罪広告等請求事件 |
裁判年月日 | 平成31年3月5日 |
裁判所名・部 | 東京地方裁判所 |
<判示事項の要旨>
被告が発行する週刊誌『FRIDAYデジタル』に掲載された「茨城 守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」と題した記事について、名誉を毀損された旨の主張をしました。
原告:茨城県守谷市長
被告:週刊誌『FRIDAYデジタル』の発行者
原告である茨城県守谷市長は損害賠償の支払いおよび謝罪広告の掲載による名誉回復措置を主張しました。
被告が雑誌に掲載した内容は事実無根であり、原告の名誉を毀損したとして被告に対して165万円の支払いを命じるという判決が成立。
ただし、原告が主張する謝罪広告の掲載までは必要性がないとされ、認められませんでした。
参考:裁判例結果詳細「平成29(ワ)18277」
インターネット上の誹謗中傷に対して損害賠償を請求する方法
インターネット上で誹謗中傷を受けた場合、どのようにして損害賠償を請求できるでしょうか?
法律に関わるトラブルは弁護士など法律の専門家に相談しましょう。
SNS上のトラブルはIPアドレスを開示請求することによって、発信者を特定できます。
弁護士へ相談する
法律の困りごとは法律の専門家へ。
名誉毀損に関する損害賠償や名誉回復措置の請求について、不明点を弁護士に相談できます。
インターネット上のトラブルに強い弁護士も多く、名誉毀損や誹謗中傷に関する悩み事を解決してくれるでしょう。
法律に関してのお悩み事は、以下の窓口を活用できます。
インターネット人権相談受付窓口:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html
法テラス:https://www.houterasu.or.jp/
弁護士ドットコム:https://www.bengo4.com/
誹謗中傷の証拠を保存する
インターネット上で誹謗中傷が行われた場合、その証拠を保存しておきましょう。
誹謗中傷された証拠として、音声データ、あるいはスクリーンショットなどの情報で保存しておくことが重要です。
また、SNS上による誹謗中傷があった場合には該当サイトのURLや、ユーザーのID情報などを保管しておきましょう。
IPアドレスの開示請求(発信者情報開示請求)
誹謗中傷の証拠を集める際、サイト管理者に対するIPアドレスの開示請求およびインターネットプロバイダーに対する発信者情報の開示請求ができます。
発信者情報開示請求により、発言者が匿名であったとしても個人情報を特定できるのです。
発信者を特定することによって、警察への告訴や裁判を起こせます。
身近な名誉毀損と誹謗中傷に注意
名誉毀損と誹謗中傷に関する損害賠償の概要や、損害賠償の定義を紹介していきました。
事業者にとって名誉毀損を受けた場合、大きな営業損失を引き起こしてしまいかねません。
インターネットが発展して気軽に情報発信できるようになった現代では、情報を発信する側も受信する側も名誉毀損に該当しないかどうか注意を払う必要があります。
事業者にとって名誉毀損の損害賠償を求める裁判を起こした場合、50~100万円というのが相場です。
損害賠償の他に、名誉回復措置などを請求することもあります。
損害賠償の裁判を起こす場合は、しっかりと証拠を保存して弁護士など法律の専門家に依頼しましょう。
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